
再選へ動くインファンティーノ会長と揺らぐ反対派の思惑
国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ会長(56)が、一時は進退の危機に直面したものの、2027年3月の会長選挙で再選を果たす可能性が再び極めて高くなっています。これを受け、同氏の退陣を要求してきた反対派は、これ以上の直接対決を避け、会長に集中している権限を縮小させる方向へと現実的な方針転換を検討し始めています。
ロイター通信が11日に報じたところによると、FIFA内部の動向に詳しい複数の関係者は、インファンティーノ氏がすでに再選に必要な十分な支持基盤を確保していると指摘しました。これにより、反対派は対立候補の一本化を断念し、FIFAのガバナンス改革(意思決定機関の分散)に注力する構えを見せています。ある国際サッカー界の関係者は「3週間前まではインファンティーノ体制は終焉を迎えると考えていたが、彼がこの10年間で築き上げた強固なネットワークは予想を遥かに上回るものだった」と漏らしています。
権力維持を支える「1国1票」の投票構造と強固な支持基盤
インファンティーノ氏は今年、ワールドカップをはじめとするFIFA主要大会の商業的権利(持分20%)を民間投資家に売却する計画を進めたものの、これが頓挫したことで激しい批判にさらされました。日本サッカー協会(JFA)が所属するアジアサッカー連盟(AFC)をはじめ、欧州サッカー連盟(UEFA)、北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)などの主要連盟がFIFA首脳部の刷新を要求。フランスサッカー連盟(FFF)も同氏の支持撤回を表明するなど、就任以来最大の政治的危機を迎えていました。
しかし、FIFAの会長選挙における特有の構造が、インファンティーノ氏の優位性を決定づけています。FIFA総会では、加盟する211の国と地域が協会の規模に関わらず均等に「1国1票」を投じるシステムが採用されています。欧州(UEFA)の加盟数は55に過ぎず、仮に欧州全体が一致団結して反対したとしても、過半数(106票以上)を崩すことはできません。実際に、開発支援金などの経済的恩恵を受けているオセアニアやアフリカの加盟国の多くはインファンティーノ氏を強力に支持しています。ニューカレドニアサッカー協会のスティーブ・ライグル会長は「オセアニアのほとんどの協会長が彼を支持しており、最後までその姿勢は変わらない」と明言しています。さらに、南米サッカー連盟(CONMEBOL)も支持に回っているとされています。これは、かつてジョアン・アベランジェ氏やゼップ・ブラッター氏が用いてきた、地方への開発支援を通じた集票戦術の伝統的な踏襲とも言えます。
対抗馬不在と候補擁立のタイムリミット
反対派にとって最大の障壁となっているのが、インファンティーノ氏に対抗できる強力なリーダーシップを持った候補者が不在であるという点です。これまでフランスの強豪パリ・サンジェルマン(PSG)の会長を務めるナセル・アル=ケライフィ氏の名前が浮上したものの、本人はFIFA会長選挙への出馬意志を明確に否定しました。また、CONCACAFのビクトル・モンタリアニ会長も、勝算がない限り出馬は見送る方針であると伝えられています。
次期会長選の候補者登録締め切りは11月18日に迫っており、残された時間は2ヶ月足らずです。フランスサッカー連盟のフィリップ・ディアロ会長は「FIFA会長に対する信頼は大きく揺らいでいる。しかし、ただ反対するだけでなく、すべての大陸を巻き込める具体的な改革プログラムと候補者を擁立しなければならない」と危機感を示しています。
「退陣」から「権限縮小」への戦略転換
このような状況下で、反インファンティーノ陣営は、選挙で正面衝突して敗北した場合、かえって現体制の権力基盤を強固にしてしまうリスクを懸念しています。そこで浮上したのが、会長に集中している戦略的・商業的な意思決定権限を事務総長や独立した第三者機関へと分散させ、強大な権限を制限する「牽制装置」の導入です。
一時は「退陣要求」一色だったFIFAの権力闘争は、現実的な「権限制限」に向けた制度改革へと舵を切る見通しとなっています。運命のFIFA会長選挙は、2027年3月18日にモロッコのラバトで開催される予定です。


