
韓国大衆文化を支えた「国民の父」たち
俳優チ・プルアムの訃報を受け、同じく韓国の大衆文化を牽引してきたアン・ソンギ、イ・スンジェといった伝説的俳優たちの足跡が改めて注目を集めている。彼らは長年にわたり韓国のドラマ、映画、演劇界の象徴として、国民から深い愛着と敬意を寄せられてきた存在だ。

チ・プルアム:不朽の名作を支えた温かな父親像
チ・プルアムは29日の午後10時頃、入院治療中だったソウル広域市江西区の病院にて87歳で逝去した。昨年3月に腰椎ヘルニアの手術を受けた後、歩行困難となりリハビリに励んでいたが、2011年から14年間親しまれたKBS1『韓国人の食卓』からも降板を余儀なくされていた。
1939年生まれの故人は、1959年に演劇『ハムレット』でデビュー。1967年にKBSの特採タレントとしてキャリアをスタートさせ、MBC『捜査班長』のパク・ヨンハン班長役や『田園日記』のキム会長役で、韓国社会における「理想的な父親像」を体現した。67年間の活動を通じて刑事から農村の家長まで幅広く演じ、世代を超えたアイコンとしての地位を確立。通夜はソウル峨山病院葬儀場で営まれ、遺族には妻の女優キム・ミンジャ氏らがいる。

アン・ソンギ:韓国映画界の顔としての軌跡
アン・ソンギは先月1月5日、74歳でこの世を去った。2019年から血液がんと闘病していた彼は、昨年12月30日に自宅で倒れ、搬送先での治療もむなしく6日後に息を引き取った。
1957年の映画『黄昏特急』で子役デビューを飾って以来、『風が吹くよい日』や『南部軍』、『閑山:龍の出現』など170本以上の作品に出演。韓国映画の歴史そのものとも言えるキャリアを築き、金冠文化勲章の受章やユニセフ韓国委員会親善大使としての社会活動も高く評価されていた。韓国において「国民俳優」という称号が最もふさわしい人物の一人として、多くの仲間や観客から深く信頼されていた。

イ・スンジェ:舞台と画面を往来した91年の生涯
イ・スンジェは昨年11月25日、91歳で逝去した。1956年に演劇『地平線の彼方へ』でデビューし、69年間にわたり舞台とテレビの両面で活動。ドラマ『許浚』や、日本でも親しまれたシットコム『ハイキック!』シリーズなど、コミカルな役から重厚な役まで幅広く演じ、「ヤドン・スンジェ(エロ親父)」という愛称でも親しまれた。
彼は俳優としてだけでなく、演出家や後進の育成、さらには国会議員としても活動するなど多才な顔を持っていた。2024年のKBS演技大賞では史上最年長の最高賞受賞記録を樹立。高齢ながら最後まで舞台にこだわり続けた姿勢は、多くの演劇関係者に影響を与えた。なお、韓国ではこのような長年愛された俳優の訃報に際し、追悼特集が組まれるなど、国民文化の一時代を築いた業績を称える習慣がある。
世代を継ぐレガシー
この3人の巨星は、それぞれの代表作を通じて韓国のドラマ、映画、演劇の一時代を彩った。彼らが遺した数多くの作品と、演技に対する真摯な姿勢は、これからも作品と共に長く記憶され、次世代の俳優たちへと受け継がれていくことだろう。


