
歌手ユ・スンジュン(アメリカ名:スティーブ・スンジュン・ユ)を巡り、2023年11月30日の第二次ビザ訴訟勝訴を受け、「ついに韓国入国が可能になった」という情報がオンライン上で拡散されました。しかし、法的な観点から見ると、これは実態と大きく乖離しています。公式な通知や入国制限の解除事実は確認されておらず、裁判所の判決はあくまで行政手続きの不備を指摘するものであり、即時的な入国を保証するものではないためです。
過去の経緯とビザ訴訟の変遷
ユ・スンジュンは2002年にアメリカ市民権を取得した後、兵役忌避の疑いで韓国への入国が制限されました。その後、在外同胞滞在資格(F-4)ビザの発給を求めてロサンゼルス総領事館を相手に訴訟を起こしました。2020年3月12日、大法院は「法務部の入国禁止決定のみを理由にビザ発給を拒否することは違法である」との判決を下しました。

この判決は即時のビザ発給を命じるものではなく、行政側に適切な裁量判断を再考するよう求めたものでした。しかし、ロサンゼルス総領事館は再審査の結果、再び発給を拒否。これに対してユ・スンジュンが起こした第二次訴訟でも、2023年11月30日に大法院は、関連法令と個別の事情を十分に考慮していない行政処分であるとして、再びユ・スンジュン側の主張を認めました。
第三次訴訟と入国を阻む壁
二度の大法院での勝訴にもかかわらず、道は開かれませんでした。ロサンゼルス総領事館が2024年6月に再び発給を拒否したことで、争いは第三次訴訟へと発展しました。この裁判でも一審・控訴審ともにユ・スンジュン側の勝訴が支持されましたが、総領事館側が上告したため、現在も大法院の最終判断を待つ状況が続いています。
韓国の行政訴訟において「拒否処分の取り消し」判決が確定しても、ビザが自動的に発行されるわけではありません。行政庁は判決の趣旨に基づき再審査を行う義務を負うだけであり、この過程で再び審査が行われることが、訴訟が繰り返される原因となっています。
入国審査の独立性と複雑な実態
仮にビザが発給されたとしても、韓国への入国にはさらなる壁が存在します。ビザはあくまで入国申請の資格であり、入国そのものを確約するものではありません。空港の出入国管理当局による現場審査は、ビザ発給とは別個に行われる独立した手続きです。
また、外務部管轄のビザとは別に、法務部による入国禁止措置が維持されている限り、実質的な入国は不可能です。ビザ発給手続き、法務部の禁止解除、そして出入国審査はそれぞれが独立したプロセスであり、現状では法務部の禁止措置に変更がない以上、入国は困難な状況が続いています。

結論として、度重なる裁判の勝訴は「行政側の手続きの違法性を確認し、再審査を命じる」ことに留まっており、直ちに入国が許可されるという情報は正確ではありません。今後、第三次訴訟の最終判決と法務部の動向に注目が集まります。


