
イングランドサッカー界が、ゴールキーパーの負傷治療を悪用した、いわゆる「戦術的タイムアウト」を根絶するため、新たな試験的ルールを導入することになった。
BBCの報道によると、2026-2027シーズンからゴールキーパーの治療のために医療スタッフがピッチへ入った場合、当該チームはフィールドプレーヤー1名を試合再開後から1分間、ピッチの外へ出さなければならないという規定が運用される。
主審がゴールキーパーの治療のために医療スタッフのピッチ侵入を許可した場合、チーム監督は10秒以内に退場させるフィールドプレーヤーを1名指名し、第4審判に伝えなければならない。もし10秒以内に選手が指定されなかった場合は、キャプテンが1分間の退場措置を受けることになる。この試験的ルールについては、イングランドサッカー協会(FA)、プレミアリーグ、イングリッシュ・フットボールリーグ(EFL)、ナショナルリーグ、そして女子スーパーリーグの全てが合意済みだ。さらに、サッカーの競技規則を管轄する国際サッカー評議会(IFAB)もこの試みを正式に承認している。
なお、オーストラリアのAリーグでも同様のルール導入が検討されており、こちらはゴールキーパー治療時にキャプテンが義務的にピッチ外へ出るという案が議論されている。
イングランドサッカー界が今回のような大胆な決断を下した背景には、近年、ゴールキーパーの負傷治療が実質的な「作戦タイム」として悪用されるケースが急増している現状がある。ゴールキーパーがピッチに座り込んで医療スタッフを呼び、その隙にフィールドプレーヤーたちがベンチ付近に集まって監督の指示を仰ぐという光景は、もはやお馴染みとなってしまった。相手チームの攻勢を遮断したり、試合終盤にリードを守り切るための時間稼ぎとして治療が利用されているという批判は以前から根強かった。
記憶に新しいところでは、昨年11月にリーズ・ユナイテッドのダニエル・ファルケ監督が、マンチェスター・シティのゴールキーパーが試合の流れを止めるために負傷を装ったとして、公然と不満をぶつけた一件も議論を呼んだ。
IFABは今年2月の年次総会において、この「ゴールキーパーを利用した戦術的タイムアウト」を防ぐ対策を最優先課題として掲げた。国際サッカー連盟(FIFA)の審判委員長であるピエルルイジ・コッリーナ氏も、2026年の北中米ワールドカップにおいて、試合中断時に選手たちがベンチへ駆け寄る行為を制限するよう審判団に指示するなど、対策は急務となっている。
しかし、選手がテクニカルエリアへ移動することを禁止するだけでは、時間稼ぎを完璧に防ぐことは困難との判断に至った。そこでイングランドサッカー界は、医療スタッフの治療を受けたフィールドプレーヤーが一定時間ピッチ外に出なければならないという既存のルールを、ゴールキーパーにも適用するという方法を選択したのである。
ポジションの特性上、ゴールキーパー自身がピッチ外に出ることは困難であるため、代わりにフィールドプレーヤー1名が1分間離れるという方式だ。チームはその間、数的不利の10人で戦わなければならない。BBCは「審判は、ゴールキーパー治療中に選手がタッチライン際へ移動することまでは禁じない」としつつも、「再開後の1分間は確実に10人での戦いを強いられるため、監督たちが意図的なゴールキーパーの治療を躊躇する強力な抑止力になるだろう」と分析している。
試合終盤の守勢に回っているチームにとっては、かなりのリスクとなるだろう。時間稼ぎをしようとすれば、その後の1分間は10人で守らなければならないからだ。
もちろん、例外規定も設けられている。ゴールキーパーが治療を必要とせず、試合中断を誘発しなかった場合は適用されない。また、相手選手との接触や相手の反則による負傷、出血を伴う治療、さらには交代を要する重傷や脳震盪が発生した場合なども例外として認められる。ゴールキーパーの交代手続き自体に遅延が生じることもない。
IFABは、2026-2027シーズンを通じて今回の試験運用の結果を詳細に検証する予定だ。もし高い効果が実証されれば、2027-2028シーズンから世界中で導入される正式な競技規則となる可能性も十分にある。


