
投球や打球を精密に追跡するトラッキングシステムの導入以降、メジャーリーグ(MLB)はグラウンド上のあらゆる動きをデータ化することに成功しています。投手が投じる一球の球速や変化量から、打者のスイングスピード、さらには野手の走るルートや疾走速度に至るまで、すべてが数値として可視化される時代となりました。
しかし、これほどテクノロジーが進歩した現代においても、未だに完全には克服できていない究極の課題が残されています。それが「ファウルポールの上空を通過する大飛球」の判定です。夜空へ高く舞い上がり、ファウルポールの遥か上を越えていく打球が、果たしてフェアなのか、それともファウルなのか――。この判定ばかりは、世界最先端のスポーツ解析技術である「ホークアイ(Hawk-Eye)」をもってしても、正確に測定することが極めて困難なのです。
現在、MLBでも韓国プロ野球(KBO)と同様に、ファウルポールの上を越える打球に対してはビデオ判定(リプレイ検証)が実施されています。しかし、MLBもKBOも、最終的な結論を下すのは映像資料を食い入るように見つめる「人間の目」に頼っているのが実情です。自動ボール・ストライク判定システム(ABS、いわゆるロボット審判)のように、機械が自動的かつ一瞬で「フェア」か「ファウル」かを判別してくれるわけではないのです。
ボルチモアの主砲であるピート・アロンソは、20日に行われたニューヨーク・ヤンキースとの大一番、3-3の同点で迎えた7回裏に、誰もがホームランだと確信するような大飛球を放ちました。しかし、球審が下した判定は非情にも「ファウル」。すぐさまビデオ判定が行われたものの、判定が覆ることはありませんでした。肉眼の角度によってはポールの内側に入った(フェア)ようにも見えましたが、下された公式な結論はあくまで「ファウル」のままでした。
アロンソは試合後、スポーツメディア『ジ・アスレチック』のインタビューに対し、もどかしい胸の内をこう語っています。「サッカーにはゴールライン上を監視して飛び回る専用のカメラがあるじゃないか。ファウルポール側にも専用カメラを設置したり、レーザーを照射して判定するシステムを導入することはできないのだろうか。今の技術力や球界の資金力を考えれば、実現できない理由なんてどこにもないはずだ」
このアロンソの打球をきっかけに、判定をめぐる議論はリーグ全体へと波及しています。クリーブランドの俊英外野手スティーブン・クワンは「テニスですらミリ単位のイン・アウトを自動判定できるのに、なぜ野球ではそれができないのか」と疑問を呈しました。また、トロントのジョン・シュナイダー監督も「前回のウィンターミーティングでもこの件が議論されたと聞いている。ホークアイのカメラをそのままファウルポールの上空に向ければ済む話ではないのか? ABSがミリ単位でボールとストライクを判別できる時代なのに、なぜファウルポールへ向かう打球には対応できないのだろう」と熱弁を振るいました。


