【韓国Z世代の新トレンド】「オンミセ(엄미새)」―恋愛より母との絆を選ぶ若者たち

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【韓国Z世代の新トレンド】「オンミセ(엄미새)」―恋愛より母との絆を選ぶ若者たち
ILLIT(アイリット)のウォンヒが、自ら「オンミセ(母親に夢中な私)」であることを公言した。

韓国で現在、Z世代を中心に「オンミセ(엄미새)」という言葉が大きな注目を集めている。これは「オンマエ・ミチン・セッキ(엄마에 미친 새끼=母親に夢中な奴)」の略で、母親と旅行に行ったり、買い物を楽しんだり、日常を共有する様子を親しみを込めて表現する際に使われる。SNS上では「オンミセ診断テスト」や母娘のVlog(動画ブログ)、母と過ごした“デート”の投稿などが後を絶たない。姉や弟との親密な関係を指す「オンミセ(언미새)」「トンミセ(동미새)」といった派生語も、自然に定着している。

かつて親に過度に依存する子を「ママボーイ」「ママガール」と呼び、揶揄や否定的な目で見られていた時代とは、そのトーンがまったく異なる。韓国のZ世代にとって、親と仲が良いことはもはや隠すべき弱点ではなく、むしろ誇るべきアイデンティティとなっている。

興味深いのは、同じ時期に韓国の若年層では「恋愛をしない」割合が急増していることだ。恋愛はしていないが、情緒的なつながりそのものを放棄したわけではない。その対象が恋人から家族へとシフトしているのである。

実際、2022年に韓国の人口保健福祉協会が行った調査では、19~34歳の未婚青年の65.5%が「現在恋愛をしていない」と回答し、そのうち70%は「自ら望んで恋愛をしない自発的非恋愛」の状態だと答えた。また、韓国の調査機関「大学明日(デハンネイル)」の20代研究所が行った調査では、Z世代は「人生において無理に備えなくてもよいもの」を尋ねる質問で、唯一「恋人・愛人」を上位に挙げている。

専門家は、この変化の背景に「関係性の疲労」や「社会的不安」、「経済的負担」があると指摘する。現代の恋愛は感情だけでなく、時間や費用、生活リズムまでも調整する複雑なものとなった。韓国の調査機関エンブレインが行ったトレンドモニター調査では、「恋愛にも効率性を求める時代だ」という項目に74.9%が同意している。

社会的不確実性も大きな要因だ。就職や住居、対人関係、未来への不安といった複合的なストレスに長期間さらされている若者たちにとって、家族は最も安全な関係として映る。韓国の心理学者は「家族は安定した愛着の出発点であり、社会活動に疲れた若者が傷つかずに戻れる最も安全な拠点だ」と語っている。

また、経済的・住居的な現実も無視できない。韓国では2022年時点で20代の約81%が親と同居しており、これはOECD平均を大幅に上回る水準だ。さらに、経済力のある若者でさえ自発的に実家に留まり資産を形成する選択をしており、米欧の「ブーメラン世代」とも共通する現象として注目されている。

もちろん、こうした流れを市場も見逃していない。韓国では母親と娘をターゲットにした「孝行マーケティング」が盛んに行われている。食品メーカーが母娘で過ごす1泊2日のプログラムを開催したり、ファッションブランドが「すべてのオンミセを応援します」というメッセージを掲げて若い消費者の共感を得る例も増えている。

専門家は、家族の元で安らぎを得て再充電すること自体は精神衛生上、むしろ保護要因として肯定的に働くとする。しかし、家族が唯一の情緒的回路となり、新しい関係構築の妨げになる場合には問題が生じる。成功した大人になるためには、原家族との適切な分離が重要だと指摘されている。

彼らが共通して強調する基準は「自律性」だ。家族と親しいかどうかよりも、その関係の中で若者が自ら選択し責任を負う経験ができているかどうかがより重要だという。親の役割も変わる必要がある。成人した子を守るべき対象と見なすのではなく、自ら選択し責任を負う経験ができるよう見守る態度が大切だとされている。

結局のところ、韓国の「オンミセ」現象は、社会全体の不確実性と疲弊感が高まる時代にあって、若者たちが安全な避難所を見つけ、情緒的満足を得ようとする、現代韓国ならではの関係構築の一形態といえる。それは日本を含む他の先進国にも共通する兆候でありながら、韓国のZ世代において特に顕著に現れている点で、大きな関心を集めている。

ココナッツ編集室

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