
ドナルド・トランプ米大統領が、主要なスポーツの現場に相次いで姿を現している。スポーツに対する個人的な関心もさることながら、大規模な観衆とメディアの注目を政治的なメッセージの発信に最大限活用しようとする意図があるとの分析が出ている。
トランプ大統領は20日、米ニュージャージー州イーストラザフォードで開催された2026国際サッカー連盟(FIFA)北中米ワールドカップ決勝戦を観戦した。決勝戦が行われた競技場では極めて厳重なセキュリティチェックが実施され、取材陣や観客に対して通常より早い到着が強く求められた。この影響で、試合は予定時刻より6分遅れての開始となった。
トランプ大統領は2期目の就任以降、スーパーボウルやNBAファイナル、デイトナ500、全米大学体育協会(NCAA)レスリング選手権大会、FIFAクラブワールドカップ決勝、テニスの全米オープン男子シングルス決勝など、スポーツ界の主要なイベントに精力的に出席してきた。
大統領の出席が決まるたび、競技場の運営には劇的な変化が生じる。観客は空港並みの厳しいセキュリティチェックを余儀なくされ、持ち込み品も大幅に制限される。交通規制や移動ルートの変更により、入場までの待ち時間が大幅に長くなることも珍しくない。
昨年のライダーカップでは、ニューヨーク州警察がヘリコプターとドローンを配備し、さらに化学・生物・放射線・核(CBRN)対応チームまで待機させるという異例の体制が敷かれた。ニューヨーク・ヤンキースの試合を訪れた際は、シークレットサービス、運輸保安庁(TSA)、ニューヨーク市警といった複数の機関が総動員され、観客には試合開始3時間前の到着が強く推奨された。
大統領の公開日程は、当然ながら警護上のリスクも増大させる。米国務省で27年間勤務したスティーブン・ライス氏は、大統領の出席が事前に知れ渡ることで、攻撃勢力が計画を練り、警備の脆弱性を把握するための時間を与えてしまうことになると警鐘を鳴らす。
発生する費用も膨大だ。トランプ大統領が2025年に現職の米大統領として初めてスーパーボウルを観戦した際、大統領警護要員のホテル代だけで実に11万5000ドルを超えたことが判明している。
トランプ大統領のスポーツイベントへの愛着は以前から顕著だ。2000年には米プロ野球シカゴ・カブス、2006年にはボストン・レッドソックスの試合で始球式を務め、テニスの全米オープンやプロレス、ボクシング、総合格闘技のイベントにも継続的に顔を見せてきた。
政界では、トランプ大統領がスポーツとエンターテインメント産業を融合させた際の「拡散力」を極めて高く評価しているという声が多い。実際、選挙運動期間中もUFCの大会やアメリカンフットボールの試合に足を運び、若い男性層がメインリスナーであるポッドキャストにも積極的に出演するなど、その戦略は一貫している。
一方で、競技場での反応は極端に分かれている。クラブワールドカップ決勝や全米オープン決勝、NBAニューヨーク・ニックスの試合では、歓声以上に辛辣なブーイングが会場を包んだ。その一方で、共和党の支持基盤が厚い地域で開催されたゴルフ大会などでは、比較的好意的な反応で迎えられることも多い。
トランプ大統領は表彰式への参加にも余念がない。昨年のクラブワールドカップ決勝では、チェルシーの選手たちが優勝カップを掲げる間、あえて表彰台に残り続けてセレモニーに参加した。
今回のワールドカップ決勝でも、ジャンニ・インファンティーノFIFA会長と共に優勝トロフィーを授与するためにグラウンドへと降り立った。観客のブーイングが鳴り響く中で表彰台に立ったトランプ大統領だったが、スペイン代表主将ロドリの誘導により舞台の脇へと退き、その後、スペイン代表の選手たちが勝利の美酒に酔いしれた。
トランプ大統領のこうしたスポーツイベントへの出席は、今後も加速する可能性が高い。米国は2028年にロサンゼルス夏季オリンピックの開催を控えている。トランプ大統領は、ワールドカップやオリンピックの誘致を自身の輝かしい政治成果として強調しており、スポーツイベントを強力な「政治的資産」としてフル活用していく考えのようだ。



