
今シーズンのメジャーリーグ(MLB)トレード期限、その熱い視線を一身に集めた二つの球団がLAドジャースとミルウォーキー・ブルワーズでした。現役最高の先発投手と称されるタリク・スクーバル(30)が市場に出た際、最後まで熾烈な獲得競争を繰り広げたのがこの両チームだったからです。
結果として、いつも通りの「ドジャース勝利」となりました。去る2日、スクーバルのトレードが正式に成立。デトロイトに若手の有望株3人を放出し、ワールドシリーズ3連覇へ向けた最後のピースを埋めました。山本由伸やブレイク・スネルら、もともと超豪華な顔ぶれを揃えていた先発陣に、2024〜2025年と2シーズン連続でサイ・ヤング賞を受賞したスクーバルが加わるという盤石の体制です。
獲得戦に敗れたミルウォーキーは、ファンの間から少なくない批判を浴びました。頂点を狙える絶好のシーズンであるにもかかわらず、例年と変わらず「腰の重い」姿勢を崩さなかったという指摘が相次いだのです。
しかし、そのミルウォーキーが、皮肉にもスクーバルを打ち破りました。17日に行われたロサンゼルス遠征で、ミルウォーキーはスクーバルが先発したドジャースを6-2で撃破。スクーバルを相手に6回まで2得点を挙げ、その後もさらに4点を追加する猛攻を見せました。
この日のミルウォーキー先発は、2年目の右腕ローガン・ヘンダーソン(24)。彼にとって、この試合は特別な意味を持っていました。わずか10日ほど前まで、スクーバル獲得のトレード要員として名前が挙がり続けていたのが、他ならぬヘンダーソン本人だったからです。
デトロイトがスクーバル放出の代償として求めていたのは、「安価で、長く使えて、競争力のある若い先発投手」。ヘンダーソンはそのすべての条件を満たす逸材でした。ミルウォーキーがヘンダーソンを差し出す決断さえすれば、獲得戦を制することができたという見方が有力でした。しかし、資金力の乏しい球団であるミルウォーキーは、最後までヘンダーソンを諦めることができず、結果としてスクーバルはドジャースのユニフォームを着ることになったのです。
トレードの駒になりかけた相手を前に、ヘンダーソンはメジャーデビュー後最高のピッチングを披露しました。ドジャースの強打線を相手に7回3被安打1失点。先発として7回を投げ切ったのは彼にとって初めてのことでした。4-1とリードした7回2死、カイル・タッカーの微妙な内野ゴロを自ら捕球し、そのまま一塁へ駆け抜けてベースを踏んだヘンダーソンは、最後のイニングを終えたプレッシャーから解放されたかのように雄叫びを上げました。

ヘンダーソンはトレード期限直後、GMを訪ね「チームに残してくれてありがとう」と伝えたといいます。噂に翻弄された心境は計り知れません。スクーバルを擁するドジャースを相手に挙げたこの日の勝利は、彼にとって格別の輝きを放ちました。パット・マーフィー監督も試合後、「誰が代償だろうと、ヘンダーソンを失いたくはなかった。健康さえ維持できれば、彼はこれから長くマウンドに立ち続ける投手だ」と手放しで称賛。スクーバルを打ち破った直後の言葉だけに、その重みは格別でした。
ミルウォーキーはこの勝利でナショナルリーグ全体1位の座を堅守。ドジャースとの対戦成績を4勝3敗とし、「タイブレーカー」の権利も確保しました。リーグ上位2チームのみが得られるディビジョンシリーズ(DS)直行権を争う両者にとって、この権利は非常に重要です。現在、ミルウォーキーが首位、ドジャースが3ゲーム差の3位ですが、レギュラーシーズンの勝率で並んだ場合、直接対決で勝ち越しているミルウォーキーが「直行優先権」を持つことになります。
一方でスクーバルは、ドジャース移籍後3試合目の登板で6回2失点(1自責点)。先発の役割は果たしたものの、ドジャースが期待したような圧倒的な支配力とはいきませんでした。7安打を浴び、ほぼ毎イニング走者を背負う苦しい展開。移籍後の2試合も5回3失点、6回2失点と、決して満足できる内容ではありません。
獲得戦の「敗者」が「勝者」を圧倒したこの日、先発ヘンダーソンに加え、打線では一塁手ジェイク・バウアーズが4安打5出塁という猛活躍を見せました。対するドジャースは、要所での併殺打や信じがたい失策を連発するなど、失望の募る試合運びでした。
しかし、両者の真の勝負はポストシーズンで決まります。ミルウォーキーが歓喜の瞬間を迎えるには、何よりポストシーズンでの勝利が不可欠です。昨年もレギュラーシーズンでドジャース相手に6戦全勝と圧倒しながら、ポストシーズンのナショナルリーグ・チャンピオンシップシリーズでは4戦全敗。ドジャースの圧倒的な「スーパースター」の力の前に、抵抗もできずに崩れ去った記憶が重なります。
今季もワールドシリーズ優勝の最有力候補は、勝率1位のミルウォーキーではなくドジャースです。スクーバルをはじめとするスターたちが秋に真価を発揮し、ヘンダーソンら若く安価な選手が主力のミルウォーキーは決定的な瞬間に限界を露呈するのではないか――そんな見方が大勢を占めています。
近年、レギュラーシーズンで優秀な成績を収めながらポストシーズンで結果を残せていないミルウォーキー。スクーバル獲得を「諦めた」選択への批判は根強くありましたが、球団はリスクを負うことよりも、これまで築いてきたスタイルを貫く道を選びました。果たしてその選択が、今年はこれまでとは違う結末をもたらすのでしょうか。


