
労使協定満了に伴う職場閉鎖の懸念
メジャーリーグ(MLB)が労使交渉の決裂に伴う職場閉鎖(ロックアウト)に備え、全30球団に対して34ページにわたる詳細な行動指針を配布したことが明らかになりました。選手と球団職員の接触制限からフリーエージェント(FA)交渉、トレードの凍結、公式サイトでの画像使用制限、さらにはクリスマスカードの送付禁止に至るまで、極めて具体的な禁止事項が規定されています。
米スポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」の報道によると、MLBのダン・ハレム副コミッショナーが最近、球団オーナーや幹部陣に向けて同文書を送信したとされています。
現在、MLBと選手会(MLBPA)が結んでいる労使協定(CBA)は12月1日午後11時59分に期限を迎えます。新たな協定が妥結に達しない場合、機構側は12月2日から職場閉鎖に踏み切る公算が高まっています。
接触制限と業務凍結の具体的なルール
職場閉鎖が発動した場合、球団は40人枠に登録されている選手との間で野球関連の業務を行うことが一切できなくなります。FA契約やトレードを含む選手の移動が全面中断されるほか、球団施設でのトレーニングやコーチ陣による指導も禁止されます。
さらに、選手と球団職員の私的な接触も厳しく制限されます。偶然遭遇した場合でも挨拶程度にとどめる必要があり、結婚式などに招待された場合でも野球やロックアウトに関する話題に触れることは禁じられます。12月2日以降は年末のクリスマスカードやプレゼントの送付も禁止対象となります。オフシーズンの練習プログラムは発動前に配布されたもののみ使用可能で、発動後の新規提供は認められません。
また、MLB公式ウェブサイトや球団サイトから現役選手の写真や動画が削除される措置も含まれています。これは前回の2021〜2022年の職場閉鎖時と同様の対応となります。
NPBなど海外リーグ参戦の可能性
今回の指針で関心を集めているのが、選手が他国のプロリーグでプレーする可能性に関する規定です。
MLB側は、職場閉鎖期間中に選手が日本プロ野球(NPB)やウインターリーグなど他国のプロリーグへ参戦することをMLBとして禁止しない方針を示しました。実際の参入には各リーグの登録規定や個別契約のハードルが存在しますが、機構として海外プレーを一律に阻止しない姿勢を明確にしています。
サラリーキャップを巡る労使の深い溝
MLBがこれほど厳格なマニュアルを作成した背景には、労使間の対立が極めて深刻である点が挙げられます。
最大の争点は「サラリーキャップ(年俸総額上限)」の導入です。機構側は2027年シーズンより、チーム年俸総額の上限を2億4530万ドル、下限を1億7120万ドルとする制度を提唱しています。戦力均衡と小規模市場球団の競争力向上を目的として掲げています。
一方で選手会は強力に反発しています。サラリーキャップは選手の市場価値と年俸を人為的に抑え込む制度であると主張し、低支出球団の投資促進策や収益分配の拡大、FA権取得条件の緩和、最低保障年俸の引き上げなどを求めています。レギュラーシーズンの試合数を162試合から154試合へ減らす案なども議論されましたが、対立の根本的な解消には至っていません。
長期化の懸念と「職場閉鎖」の意味
直近の2021〜2022年の職場閉鎖は99日間に及びました。当時は2021年12月2日から翌年3月10日まで続き、開幕時期が4月7日までずれ込んだものの、日程調整を経て162試合が消化されました。
しかし今回の争点であるサラリーキャップは、1994年の労使ストライキでワールドシリーズ中止という事態を引き起こした核心的問題でもあり、交渉の長期化が強く懸念されています。
なお、職場閉鎖(ロックアウト)とは、労使交渉の決裂時に球団オーナー側が選手の業務を一時停止させる措置です。選手側が主体となってプレーを拒否する「ストライキ」とは異なり、雇用主側が選手から練習施設や契約の機会を遮断する点が特徴です。


