
ここ数年間、メジャーリーグ(MLB)は間違いなく「大谷翔平の天下」だった。大谷は2023年にアメリカン・リーグ、2024〜2025年にはナショナル・リーグで最優秀選手(MVP)に選ばれ、3連覇という偉業を達成した。直近5年間に視点を広げれば、2022年の1シーズンを除き、実に4度もMVPの栄冠に輝いている。ロサンゼルス・ドジャースに移籍した直後の2024〜2025シーズンにはワールドシリーズ2連覇まで達成し、チーム成績でも頂点を極めた。現時代最高の選手としての地位を確固たるものにし、ベーブ・ルースと並び称され「歴代最高」を争う存在だという評価が定着して久しい。
しかし今年、そんな大谷の「1人独裁」体制に大きな亀裂が生じている。ニューヨーク・ヤンキースのアーロン・ジャッジに敗れた2022年以来、初めて大谷がMVPを受賞できない可能性が現実味を帯びてきた。シカゴ・カブスの万能中堅手、ピート・クロウ=アームストロングが各種MVP予想レースで大谷を猛追し、今やその差を広げつつあるのだ。
クロウ=アームストロングは20日現在、打率0.279、31本塁打、OPS 0.928を記録中。打率0.294、30本塁打、OPS 0.949の大谷と共に、ナショナル・リーグ最高レベルの成績を残している。接戦時の勝負強さも際立っており、18日のシカゴ・ホワイトソックスとのダービー戦では、延長10回裏に劇的なサヨナラ本塁打を放った。続く翌日のホワイトソックス戦でも、1回裏の先頭打者として初球本塁打を叩き込むなど、その勢いは止まらない。
クロウ=アームストロングが大谷との差を広げている最大の要因は、圧倒的な守備力だ。彼は今シーズン、守備指標であるOAA(Outs Above Average)で23を記録し、メジャー全体で1位を独走している。中堅手2位であるボストンのセダン・ラファエラの14を大きく引き離す数字だ。OAAは平均的な野手と比較してどれだけ多くのアウトを取ったかを示す指標だが、シーズンを約80%消化した時点で、平均より23個も多くのアウトを積み上げたことになる。
OAAが導入された2016年以降、中堅手の1シーズン最高記録は2017年のバイロン・バクストン(ミネソタ)の26である。今のペースであれば、クロウ=アームストロングが新記録を樹立するのは時間の問題だろう。全ポジションを通じた最高記録である2018年、アリゾナの遊撃手ニック・アーメドの34を上回る可能性さえ秘めている。「中堅手の守備に関しては、MLBの歴史を通じても彼が最高だ」という評価も決して過言ではない状況だ。

クロウ=アームストロングが守備で史上最高を目指して突き進む一方、大谷は守備部門では「開店休業」の状態が続いている。先月4日のサンディエゴ戦以降、投手としての登板はなく、1ヶ月以上指名打者としてのみの出場となっている。過去2年間、指名打者のみの出場でもMVPに選ばれるほどの卓越した打撃を見せてきた大谷だが、今季の成績は昨年に比べるとやや物足りなさを感じる。クロウ=アームストロングの猛追を退けるためには、投手としてのさらなる復帰と活躍が不可欠だ。
現在、大谷はブルペン投球でマウンド復帰に向けた準備を進めているものの、実戦復帰の具体的な時期は依然として不透明だ。復帰後に往年の姿を取り戻せるかも、現時点では予測がつかない。
大谷が投球を中断している間、二人のWAR(代替選手対比勝利寄与度)にも如実に差が現れ始めている。ベースボール・リファレンス基準で、クロウ=アームストロングが7.8 WARを記録する一方、投打合算の大谷は6.8 WARにとどまっている。攻守走を包括的に評価するこの指標においても、今のところ軍配はクロウ=アームストロングに上がっている。
選手間でもMVPの選考に対する見方が割れている。ESPNがドジャースとカブスを除く9球団の選手20名に行ったアンケートでは、15名がクロウ=アームストロングを支持し、大谷を支持したのはわずか4名、共同受賞が2名という結果が出た。長らく支配してきた「大谷の時代」に、ついに強力なライバルが立ちはだかろうとしている。


