懸念が現実化した過密日程の弊害

国際サッカー連盟(FIFA)が導入した史上最長のAマッチ期間により、世界中で負傷者が続出する「負傷ドミノ」現象が現実のものとなっています。制度施行前から多くの懸念が示されていましたが、実際に多くのトッププレーヤーが離脱を余儀なくされ、代表監督や所属クラブから制度に対する批判が噴出しています。
FIFAは今回、9月と10月のAマッチ期間を統合する新しい方式を初めて採用しました。従来は2試合ずつ行われていた日程を統合し、各代表チームは先月21日からの約16日間で最大4試合を戦うことになりました。FIFAの導入意図は、リーグ戦の中断回数を減らし、大陸間の移動負荷を軽減するとともに、代表監督と選手が長期間連携を深める時間を確保することにありました。
批判が高まる制度の矛盾

しかし、この制度に対しては、選手会や各リーグ団体から導入当初より強い反発がありました。最大の論点は、試合負荷を軽減するのではなく、単に短期間に試合を詰め込んでいるに過ぎないという点です。リーグ戦の直前・直後に代表戦が重なることで、ローテーションなしでは選手の疲労蓄積が避けられず、負傷リスクが飛躍的に高まるとの警告が現実となりました。
実際、各国の代表チームでは離脱者が相次いでいます。オランダ代表ではブライアン・ブロビーやコーディ・ガクポら主力級が立て続けに負傷。イングランド代表のエズリ・コンサらもチームを離脱しました。ノルウェー代表のエース、アーリング・ハーランドが試合中に自ら交代を申し出る事態も発生するなど、選手の健康状態への懸念が深刻化しています。
ワールドカップ後の過密スケジュールが与える影響

今回の事態をより深刻にしているのは、北中米ワールドカップ直後という時期の悪さです。史上初めて48カ国が参加した同大会では、6月から39日間で104試合が行われ、大会終盤まで勝ち残った主力選手たちは十分なオフを確保できないまま新シーズンに突入しました。そのわずか1カ月後にこの過密なAマッチが重なったことで、選手の肉体は限界に達しています。
現場の指揮官からも憤りの声が上がっています。オランダ代表を率いるシャビ・エルナンデス監督は、「ワールドカップ終了から間もない時期にこのような過密日程を組むのは問題を招くだけだ」と指摘し、選手の健康を考慮した従来の方式への回帰を求めました。また、イングランド代表のトーマス・トゥヘル監督も、頻繁な移動や芝の状態変化が負傷リスクを増大させると述べ、現行制度の厳しさを強調しています。
選手を資産として抱える所属クラブ側にとっても、代表招集による負傷は経営上の大きな損失です。FIFAは2030年までこの方式を維持する方針を示していますが、現場からの批判を受け、制度の見直しを迫られる局面を迎えています。


