
2024年、2025年シーズンにアメリカン・リーグのサイ・ヤング賞を連続受賞したタリク・スクーバルの実力を疑う者は、今や誰もいない。ロサンゼルス・ドジャースが悲願のワールドシリーズ3連覇を果たすための「最後のパズルピース」として白羽の矢を立てたのも、まさにこの絶対的エースだった。ドジャースは去る4日、外野手のザイアー・ホープや投手のリーバー・ライアンなど、将来を嘱望される至宝プロスペクト3人をデトロイト・タイガースへと放出し、スクーバルの獲得に成功。しかし、そんな歓喜も束の間、スクーバルはドジャースに移籍して数日もしないうちに、現地から非常に冷ややかな視線を浴びる事態となっている。
騒動の引き金となったのは、去る8日に公開されたポッドキャスト番組でのスクーバルの発言だ。なんと彼は、直前まで所属していたデトロイトへの強い未練と、将来的な復帰の意向を早くも公言したのだ。番組内で彼は「デトロイトでプロ生活のすべてを送りたかった。今シーズンが終わって11月になったら、デトロイトと(契約の)交渉を再開できることを心から願っている」と語ったのである。
スクーバルは今シーズン終了後にフリーエージェント(FA)となる。今オフのFA市場における最大の超目玉であることは確実であり、彼が最終的にどの球団と契約を結ぶかは誰にも分からない。当然、古巣デトロイトに電撃復帰する可能性も十分に開かれている。
だが問題なのは、現在のスクーバルは「ドジャース所属の選手」であるという点だ。超大型トレードでの移籍からわずか数日しか経っていないタイミングで、公の場で堂々と前所属チームに戻りたいという意思を示したことは、プロ意識に欠ける極めて不適切な言動であるとの指摘が出ている。特に、血の滲むような思いで貴重な有望株を放出したドジャースファンの世論は猛反発の様相を呈している。MLB公式サイト(MLB.com)が評価したチーム内有望株ランキングにおいて、ホープは5位、ライアンは7位に位置する一級品の有望株だったからだ。LA現地の著名なスポーツラジオ司会者ダグ・マケイン氏は、「この男はドジャースのユニフォームに付いた値札さえ剥がし終えていないというのに、もう昔の恋人の話(デトロイトへの未練)をしている」と、スクーバルのデリカシーのない発言を痛烈に批判した。さらに同氏は、「エース級投手をたった1人連れてくるために、ドジャースは血涙を流しながら最高級の有望株2人を放出した。それなのにスクーバルは1週間も経たないうちに、もうデトロイトに向けて『僕をまた受け入れてくれ』とラブレターを送っている」と不快感を露わにした。
さらに、この物議を醸した発言が、ドジャースが「最悪の泥沼連敗期」を彷徨っていた最中だったことも火に油を注いだ。ドジャースは当時、悪夢の8連敗を喫しており、9日のアリゾナ戦でようやく勝利を収めて連敗を脱出したばかりだった。スクーバルがドジャース初先発のマウンドに上がった5日のシカゴ・カブス戦でも、チームは1-5で敗戦。スクーバル自身は6イニング2失点と先発としての最低限の期待値は満たしたものの、救世主としてチームの連敗を止めることはできなかった。
実はスクーバルは、去る3月に開催されたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の際にも、その「軽率な言動」で物議を醸した前科がある。アメリカ代表のエースとして多大なる期待を背負って参戦したものの、彼は突然「1試合だけ投げて早期離脱する」と表明。その後、非難を浴びると「追加登板の可能性もある」と態度を軟化させたが、結局は再び「やはり1試合だけ」と前言を翻した。さらに「次のオリンピックやWBCには、アメリカ代表としてまた出場したい」と言い訳めいた発言に終始した。グループリーグで1試合だけ投げて大会を後にした利己的な選択だけでなく、二転三転する不誠実な態度に対し、当時も野球ファンから猛烈な批判を浴びていたのだ。


