
サッカーにおいて、チームの最終決定権を持つ「監督」は通常一人だけ。しかし、欧州最高峰の舞台でこの常識を打ち破るチームが現れました。二人の監督に全く同じ権限と責任を委ねるという大胆な挑戦を行い、見事に結果を出したノルウェー1部リーグ(エリテセリエン)のバイキングFKです。
米CBSスポーツは9日、バイキングFKのユニークな指導体制にスポットを当てた特集記事を掲載しました。通常、一人の指揮官がチームを率いるのとは異なり、バイキングFKの指揮官はビャルテ・ルンデ・アルスハイムとモルテン・イェンセンの二人。監督とヘッドコーチという上下関係ではなく、二人ともが全く同じ権限と責任を持つ「共同監督」なのです。
この前代未聞の実験は、ある偶然から始まりました。バイキングFKは2021年シーズンを控えてビャルネ・ベルントセン監督と袂を分かち、新たな指揮官を探していました。クラブの最高経営責任者(CEO)であるエイリク・ビョルネ氏は、当時クラブでコーチを務めていたアルスハイムとイェンセンをそれぞれ個別に面接し、どちらか一人を監督に選任する計画でした。
ところが、面接当日に現れたのは二人一緒でした。ビョルネCEOはCBSスポーツとのインタビューで、「二人のコーチを別々に面接しようとしたのですが、なぜか二人で一緒に入ってきたのです。それは彼らのアイデアでした」と当時の驚きを振り返りました。
クラブ側が「どちらか一人を選ばなければならない」と伝えると、二人は「それなら一緒に監督を務めたい」と逆提案。結局、バイキングFKは熟考の末、この大きな冒険に出ることを決断しました。
しかし、この無謀とも思われた冒険が、クラブにとって歴史的な大成功をもたらすことになります。「ダブル監督体制」で迎えた最初のシーズン(2021年)、バイキングFKはエリテセリエンで3位に入り、旋風を巻き起こしました。2022年こそ11位と一時的な低迷を経験したものの、2023年には4位に再浮上し、2024年にも再び3位と安定した強さを見せました。
そして昨年、ついに頂点に輝きました。強豪ボデ/グリムトと熾烈なデッドヒートを繰り広げた末、勝ち点「1」差で劇的な優勝を果たしたのです。これは1991年以来、実に34年ぶりとなるチーム通算9回目のリーグ制覇という歴史的快挙でした。
バイキングFKの奇跡は国内だけにとどまりません。リーグ優勝によってUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)予選の出場権を得た彼らは、プレーオフで名門ディナモ・ザグレブ(クロアチア)を破り、見事にUCLリーグフェーズ進出まで成し遂げたのです。
共同監督体制において最も懸念されるのは、やはり「権力のパワーバランス」です。いくら同等の権限を持つと約束しても、現場では瞬く間にどちらか一方に主動権が偏ってしまいがちだからです。
しかし、この体制が始まって5年が経った現在でも、二人の監督の地位と権力には一切の差がありません。これにはビョルネCEOによる見事なマネジメントも大きく貢献しています。彼は「私たちが議論するプロセスは非常に興味深いものです。例えば、何か問題が生じた際、私が二人のうち一人と話をすれば、次に別の問題が生じたときにはもう一人と話をします」と語り、「その後、三人が集まって徹底的に議論を重ね、最適な解決策を見出します」と明かしました。結果としてCEOが調整役として介入する形にはなりますが、これまで致命的な不協和音は生じていないといいます。
結局のところ、このシステムで最もハードワークを強いられているのは、二人の監督ではなくCEO自身なのかもしれません。ビョルネCEOは「正直なところ、他のチームに共同監督制を勧めたいとは思いませんね。結局、私の仕事が倍に増えただけですから(笑)」と、苦笑い交じりのジョークで締めくくりました。



