
母国スイスがまさかの支持撤回
国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ会長に対する欧州圏の反発が、かつてないほど強まっている。FIFA本部を擁し、インファンティーノ氏の出身国でもあるスイスサッカー協会(SFV)が、次期会長選挙における同氏への支持を正式に撤回した。
スイスサッカー協会は25日に中央委員会を開催し、今年6月に表明していたインファンティーノ氏の再選支持を取り消すことを30日に公式発表した。わずか3ヶ月での異例の方針転換は、サッカー界に衝撃を与えている。
支持撤回の根拠とFIFAのガバナンス問題
スイスサッカー協会は支持撤回の理由について、「ここ数ヶ月間の出来事を総合的に再検討した結果」と説明している。特にFIFAのリーダーシップ、組織運営(ガバナンス)、透明性、そして意思決定プロセスの在り方に「根本的な疑問」を抱いたとしている。これらの懸念が解消されない現状では、インファンティーノ氏を支持し続けることは正当化できないという判断だ。
議論の引き金となったのは、FIFAが推進したものの後に撤回された「FIFAフォワード・エンタープライズ」構想である。これは主要大会の商業権を保有する別会社を設立し、民間投資家に最大20%の持分を譲渡するという案だった。意思決定プロセスの不透明さに強い批判が集中し、結果として計画は白紙撤回された。
加えて、いわゆる「バロガン事件」における選手資格規定の曖昧さや、大会運営の公平性に関わる問題も支持撤回の要因として挙げられている。これらは、FIFAが掲げる「公平性」や「透明性」という基本原則が揺らいでいるという厳しい認識を反映している。
欧州サッカー界で広がるインファンティーノ離れ
今回の決定は、単なる一国の方針転換以上の意味を持つ。インファンティーノ氏はスイス出身の行政家であり、地理的にも組織的にもFIFAはスイスと深い縁がある。その母国が公然と背を向けた事実は、同氏の政治的な求心力に大きな打撃を与えた。
欧州の動きはスイスにとどまらない。すでにイングランド、ウェールズ、フランス、イタリア、セルビアなど、多くの主要協会が支持を撤回している。フランスサッカー協会は、FIFAの運営方式に対する信頼性の欠如を指摘し、一度決めた支持を覆した。また、欧州サッカー連盟(UEFA)のアレクサンデル・チェフェリン会長は、『裸の王様』を引用してインファンティーノ氏を強く批判しており、11月の候補登録締め切りに向けて対立候補を擁立する構えを見せている。
今後の展望:グローバルな勢力争いへ
インファンティーノ氏は2016年の初当選以来、FIFAの指揮を執り、2027年3月の選挙で再選を目指している。今回の欧州勢の離反は、彼の基盤を大きく揺るがすものだが、直ちに落選を意味するわけではない。ロイター通信などの報道によれば、インファンティーノ氏は依然としてアフリカや南米、その他多くの中小サッカー協会からの安定した支持を維持しているとの見方もある。
欧州を中心とする「FIFAの改革を求める勢力」と、グローバルな票田を握る「現体制維持派」の間で、今後の選挙戦は激しさを増すことが予想される。母国や主要国に見捨てられつつあるインファンティーノ氏が、いかにしてこの政治的な孤立を打開するのか、サッカー界の注目が集まっている。


