

人種差別行為への制裁として下されたはずの「無観客試合」の場で、6000人を超える人々が観戦するという異例の事態が発生しました。欧州サッカー連盟(UEFA)の決定により無観客で行われるはずだったUEFAネーションズリーグ・リーグAグループ3のクロアチア対イングランド戦において、例外規定が適用されたことで処分の実効性をめぐる議論が巻き起こっています。
人種差別への制裁と「無観客試合」の実際
試合はクロアチアのリエカにあるスタディオンHNKリエカで行われ、イングランドが7-0で大勝を収めました。しかし、この試合は本来、公式に「無観客試合」として指定されていたものです。クロアチア代表は過去の国際大会において一部ファンによる人種差別行為や騒動を起こしており、UEFAから厳しい制裁を受けていました。
それにもかかわらず、スタジアムには数多くの観客が詰めかけました。現地報道によると、14歳以下のクロアチアの子供たち約6200人が無料で招待されており、約8200席のスタジアムの約75%が埋まるという、制裁とは到底思えない光景が広がっていたのです。

UEFAの例外規定とは何か
なぜ無観客処分中にこれほどの人数が入場できたのか。その理由は、UEFAの規定にある例外条項にあります。UEFAは無観客試合であっても、14歳以下の子供が学校やサッカーアカデミーの団体を通じて、保護者同伴で入場することを特例として認めています。当初、UEFA側は約3000人の入場を見込んでいましたが、クロアチアサッカー連盟が招待の規模を大幅に拡大した結果、実際の観客数は予想を大きく上回りました。
さらに、イングランドサッカー協会との協議を経て、イングランドのサポーターにも100枚の無料入場券が割り当てられました。結果としてスタジアムは歓声に包まれ、無観客試合という処分の定義が実質的に形骸化する形となりました。
「完全な喜劇」との批判と処分の是非
この状況に対し、イギリスメディアからはUEFAの姿勢を疑問視する声が相次いでいます。英ミラー紙のジョン・クロス記者は、子供たちのサッカー観戦そのものを否定しつつも、この状況を「完全な喜劇(Utter farce)」と表現し、処分の有効性に強い不信感を示しました。
ガーディアン紙も同様に、UEFAが人種差別問題に対して「誤ったメッセージを送っている」と指摘しています。成人観客の排除には成功したものの、例外規定を広範囲に適用したことで、人種差別に対する処分の重みや本来の趣旨が薄れてしまったという見方が強まっています。



